ぼんやりテレビを見ていたら、どこかの製糸会社が出ていました。お蚕さんの繭玉が、全国から沢山持ち込まれる工場も高齢化が進んでいるらしい。製糸会社は全国にたった2社しかないとのこと。
ザ・たたみハウスのある長野県も、かつては生糸の生産、製糸業の盛んな地域だったと聞きます。
桑畑も多く、居宅の二階がお蚕部屋だった農家さんの建物もたくさん残っています。
ただ、近所の様子を見ていると、その空間も、今ではもっぱら干し柿場か物置で、建て替えと同時に消え行く存在のようです。
近年は国内の絹の需要が減り、生産の多くが中国に移っているらしい。
すっかり、ナイロンなどの科学繊維がその座を奪ってしまいました。
・・・そんな話を聞いていて、このあいだ壁を塗っていただいた左官屋さんとの話を思い出しました。
お聞きしてはいましたが、最近は左官屋さんの仕事が減っているそうです。
ちょうど近所に住む知り合いが、本格的な土壁の家を建てていますが、そんな家はめったにないそうです。考えてみれば新築の土蔵もあまり見ませんね。
ザ・たたみハウスも、土壁の家ではありませんが、いちおう内壁、外壁ともに塗り壁の家。そして、大きな土間や広い犬走りも左官仕事になります。洗い出しってやつ。
塗りの家は、土壁の家ほどではありませんが、コストがかさむ家づくりだそうです。
そう、施主にしてみれば左官仕事はコストと天秤にかけることに。
他の工法と比べれば、贅沢な壁ということになります。
塗り壁に変わる工法としては、サイディングや塗装、クロスが代表格でしょうか。いずれも、工期短縮と機能アップ、その結果コストダウンにつながる・・・ということで、市場ニーズともフィットして、そのシェアを圧倒的なものにしてゆきます。つまり、壁の技術は進化していると、そういうことでしょう。
そんな事情で、昔ながらの工法を続ける左官職人さんが減っているというわけです。
中には、
「このままゆくと左官職人がいなくなる」
なんてことをおっしゃる職人さんもいらっしゃいます。
ただ、ニーズがまったくないわけではなさそうです。
それはコンクリート建築の世界。
コンクリート建築を近代建築と呼ぶのかどうかは素人には分かりませんが、昔ながらの左官技術は新しいコンクリートの世界で活路があるそうです。ただし、この分野でも技術革新が進んでおり、安泰というわけではないそうですが。
余談ですが、コンクリート建築の普及に伴い左官仕事の新たな需要が生まれても、そこでは技術が育まれにくい環境があるという意見もあります。完成された職人の技術のみを必要とする現代の建築業界では、これまで培った左官の技術を消耗しているに過ぎないという話。
匠研究室さんの「16.左官工事」に詳しいお話が載っていました。
話が横にそれましたが、塗り壁の将来は、嗜好品的な位置づけとして残ることはあるにしろ、かつてあった一般的なというか、日常的な塗り壁はますます減ってゆき、技術もどこかへと消えてゆく。そんな危機感を、外野の自分も感じます。
左官屋さんに限りませんが、往々にして職人と呼ばれる方々の技術ってのは尊いですね。
たとえそれが現代の市場ニーズにベストフィットしていないとしても、こういう技術には相応の価値があるだろうにと思っていましたが、間近で拝見してみて、やはりそう思います。
進化しているはずなのに、ひとつの貴重な技術が消えるという不思議。
先述の製糸工場の話ではありませんが、こうしたひとつの技術が廃れてゆくのは残念なことだと思いました。
といいつつ、塗り壁の家づくり、最近は建材の開発で大幅な工期短縮が可能となり、コストもぐっと抑えられつつあるそうです。
本格的なこまいを組んだ土壁とまではゆかずとも、ザ・たたみハウスぐらいの塗り壁ならばどうでしょう。風合いが素敵だと自分は思います。
塗り壁の魅力についてはこんなサイトを見つけました。
畳ハウスの住人が言うより魅力が伝わるかしら・・・。
参考:All About 住まい「外壁の仕上げ 塗り壁の魅力について」