住む人数と、部屋の数や大きさがミスマッチなまま、早いもので十数年。
アパート暮らしもすっかり板の付いたこの頃、というか、自分の場合、生まれてこのかたアパートしか住んだことがないのですが、ここ地方都市では(も)、供給過剰でアパートの空き室が目立っております。
大家さんはご存知ないかもしれませんが、アパート代、最近引っ越してきた方と家賃に20%も開きがあること、案外住人は知っていたりするんです。単身アパートの住人が希薄な関係であるとは限らないのです。
とはいえ、大家さんには、とってもお世話になっていて、その20%が惜しいとはまったく思いません。
そもそも、このアパートの部屋は、この町ではめずらしく画一化されていない間取りであり、この部屋に決めたときから大変気に入っているのです。
しかし、さすがに狭い。
もともと単身者アパートとあって、住み始めた当初などは、裕福な一人暮らしの男性か、親御さんが心配してきちんとした所にとでも考えたのでしょうか、近所の高校に通う女子高生などが主たる住人像でした。
アパートの建築年はバブル絶頂の頃。たぶん、そんなマーケティングだったのかな。
ちょっと広めの単身アパートなのです。
しかし、バブルも弾けて久しい頃です。だんだんと住民の様相も変わり始め、日系人のファミリーだったり(今だかつてファミリーは一度きり。狭すぎでしょ。)、ワケありな感じの年配ご夫婦だったりという時期を経て、ある時から空き部屋がちらりほらりと目立つようになりました。
大丈夫かなーなんて思っていたころ、おそらく家賃の大幅な値引きがあり、再び単身者が戻ってきたようです。今度は安いアパートとして、元の形に戻った感じです。
単身アパートは粗末なものも多いですからね。ここは一人で住むには広々な上、しっかりした造りですから、この家賃であれば"買い"という判断でしょう。
・・・というアパートの歴史を見てきた我々(いろいろ、勝手に想像しながら)。
今ではすっかり古参。しかも、ダントツ。
「嗚呼、このまま、このアパートで埋もれて行くのかなー」なんて思いながら、窮屈なアパートに身を置いていたのです。ある意味、それを愉しみながら・・・。
そんな、他人に言わせれば「不思議な人たち」である我々ですが、たまたまある時、不思議な中古住宅を見つけたのです。
中古住宅(7LDK)530円。
地方都市とはいえ、中心市街地で100坪近い敷地に建つ7LDKが500万円そこそことは。
興味を持った我々は、なんとなく不動産屋さんに電話をしました。
よく晴れた春の土曜日の朝でした。
電話に出た愛想の良い若い女性から「営業担当が外出中なのでまた電話します」と告げられて電話を切りました。
程なくその営業さんが電話を下さったようなのですが、携帯電話から離れていたせいで気が付かず。再び折り返すも、同女性から「また外出しておりまして」とのこと。間が悪い・・・。
それっきり。
あれから1年以上経ち、ザ・たたみハウスがいよいよ完成かというこんにちまで、その営業さんから電話が掛かってくることはありません(そりゃそうだ)。
あらためて電話するなど追跡しなかったのは、「あの場所であの価格」・・・普通じゃないことは、不動産に素人の自分でもなんとなく感じていたからでしょう。
(実際、あの中古住宅は「築年数:不明」、「下水:放水」という家でありました。)
不動産は縁だと思うことが時々あります。
不動産屋さんに出向いていたら、きっと色々な家もあったことでしょう。
7LDK 530円の中古住宅。
もし出会っていたら、「このザ・たたみハウスは無かったかもなー」と思うと、ちょっとだけ感慨深いものです。
ちなみに、最初に受け付けてくださった女性に「この家のどこにご興味を?」と訊かれて、「いや、なんとなく面白そうだと思って・・・」と答えたのが、営業さんが嫌った原因だったと思います。
「春の忙しい時期に冷やかしかよ」・・・なんて思われたのかしら。
面白い・・・人に言わせると不思議な我々ならではの最大なる賛辞だったのですが。